雑記 in hibernation

頭の整理と備忘録

ムスタング再生記

かつての愛機であったムスタングをリペアするついでに、ピックアップをダンカンのP-Railsに換装してみました。その結果「自分のことをムスタングと思い込んでいる謎ギター」っぷりに拍車がかかったので、その模様をまとめておきます。

動機

学生時代にメインのギターとしてムスタングを使っていたのですが、卒業が近づく頃にはボリュームをいじるとノイズが乗ったり、トーンノブの軸がひん曲がっていたりと電装系がだいぶヤバい状態になっていました。その後社会人になってからはサブに格下げされたままで放置状態になっていたのですが、このまま遊ばせておくのも勿体無いので、リペアついでに今一度ユースケースを整理しつつピックアップ換装しちゃおう、と思い至りました。

スペック検討

まず手を加える前のギターのスペックについてです。百聞は一見に敷かず。こいつの赤です。

ムスタングなのにミディアムスケール、ブリッジにシンクロナイズドトレモロユニット、ピックアップはハムバッカー2機を搭載しています。ムスタングの使いにくいところを全否定したらムスタングの全個性が消え去ったって感じですね。どちらかというとサイクロンに近いスペックだと思いますが、Tokaiはムスタングと言いきっているので、まあ、そうなのでしょう。

で、こいつをどうしてやりたいかというと。まず、僕の手元で唯一ハムバッカーが乗っているギターということで、とりあえず「ハムの音が欲しい→ムスタング、君に決めた」的なポジションにしたい。と同時に、一日のうちにハムとシングルを使い分けたい時にギターを持ち替えたり2本持ち歩いたりするのは面倒なので「シングルもハムもこれ一本」ってな取り回しができると嬉しい。ということで、シングルの音もそれなり使えるハムを乗っけたい(が、普通のハムのコイルタップレベルはNG)、となりました。

これを叶えるため、ハムもシングルもそこそこイケるピックアップを探しまして、SEYMOUR DUNCANのP-Railsなるピックアップに行きつきました。こいつがなかなか個性的で、見た目と名前の通りレールとP-90の2種類のシングルコイルが1つづつ乗っかってます。回路を切り替えることで、レール、P-90、両者の並列と直列の計4パターンの出力が選べる、という自由度の高い仕様。検討の結果、「ハムとシングルが出せれば十分だけど、P-90の音も出せちゃうんだ、ラッキー」ってのと、「本命のHybrid Humbucker(Freedom Custom Guita)を2つ乗っけるのは予算オーバー」ってことで、このP-Railsが採用と相成りました。

改造

今回はリペア・調整も一緒にやりたかったので、自分で配線する気は端からありませんでした。お店に頼むなら大手楽器店の店頭で買ってそのままリペアに出すってのが一番楽そうだったのですが、いくつか店舗で聞いてみたところ「そもそもそんな意味のわからんピックアップは扱ってない」とのことで、結局Sound Houseで購入して個人の工房に持ち込み、という流れになりました。

購入

今回購入したのはこちら。

SHPR-1n P-Rails Neck Cream

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/154508/ フロント側ピックアップです。シングルでハーフトーンを使うことが多いので、今回はフロントとリアで音量バランスが崩れるリスクは避けたく、両方とも同じピックアップで揃える思想です。

TBPR-1b P-Rails Trembucker Cream

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/168187/ リア側ピックアップです。ブリッジがシンクロナイズドトレモロユニットなので、レスポールの弦幅が想定された無印でなくTrembuckerが適切だろうという判断です。

TS-1s Triple Shot Set Flat Cream

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/151627 今回は最低でもレール、P-90、直列、の計3パターンを選択できるようにしたかったのですが、ポットのタップではパターンが足らず、スイッチを増設する必要がありそうでした。が、スイッチを増やすとなると最悪の場合ギター本体に座繰りを入れる必要が出てくる。そうなると予算もかかるし、そうでなくても手段を検討するだけで大分面倒だなぁ。と思っていたところに、ダンカン公式でスイッチつきのエスカッションが発売されていました。これで万事解決です。今回はギターのシェイプに合わせてフラット型を選んでいますが、レスポールなどのアーチトップ用の形状も用意されています。

換装

リペア&換装は吉祥寺の工房に持ち込みました。最初こそ「今こんなピックアップ出てるんですね、、、初めて見ました、、、」と若干の困惑がありましたが、快く引き受けていただきました。リペアも含めて、工期は大体2週間くらい。

結果

こんな見た目になりました。キメラ感。

感想

直列(ハムバッカー)

良いです。というか正直良し悪しはわからないのですが、「ハムってこんな音だよね」というイメージ通りの音が出てます。こだわりがある人からすると、色々物申したいことがあるかもしれません。僕にとっては十分です。あと、フロントのハムでソロ弾くとめちゃめちゃ気持ちいいなと思いました。ファットだけど籠らないトーンの感じが超いい。

並列

わからん。太くてアタックが強いシングルって感じでしょうか。回路的にはレールとP-90のハーフトーンになっているのだろうと思うのですが、P-90のパワーが効いているのか、ストラトの一般的なハーフトーンよりは明らかに太いです。僕がレールを使うとしたらフロントとリアのハーフトーンを想定していたのですが、代わりにリアの並列を使うのはありかも、と思いました。

シングル(レール)

完全に感覚値ですが、まあ、味気ないですね。「枯れた音が〜」とか「極上のクリーントーンが〜」みたいなのとは程遠いです。「シングルですが何か?」みたいな。「普通の音だから良いじゃねぇか。あ?なんか文句あっか?」みたいな感じ。とはいえ今回のユースケースとしてはこれで十分ですし、少なくともコイルタップで得られる音よりは断然しっかりしているので、こちらも十分文句なしです。

P-90

めっちゃいいですね。クランチでコード鳴らした時の気持ちよさが段違いです。軽くゲイン上げただけで自然に歪んでくれて圧もあるって感じがハムっぽいんだけど、高音弦がはっきり聞こえてくる明るさ、ジャキジャキ感はシングル風で、このバランスがかなり新鮮です。そもそもP-90って使ったことがなかったので、単純にP-90の音が好みなだけかと思ったのですが、評判を聞くにP-Railsが特別良い、ということらしいです。ただ、コピバンだとハムかシングルかどちらかのキャラがはっきりした音を使いたいことが多く、自分の曲では普通にストラトやらテレキャスやらでシングルコイルに振り切ったアレンジにすると思うので、P-90は今ひとつ使い所がない気もします。加えて、いい感じのクリーントーンの作り方がよくわからん。勿体無いけど、意外と一番使い所がないピックアップかもしれません。

全体的に

レール単体以外はハイが強く出ている気がします。特にP-90はかなりハイが立つ。歪ませた時に顕著で、エフェクター側でトーンをかなり絞って使ってます。ボディとの相性なのかもしれません。

今回は諸々の都合でスイッチ切り替えが即座にできる仕様ではないのですが、理想としてはフロントもリアも同系統で、スイッチ一つで4パターン切り替えられる配線だと良かったかなとは思いました。ただ、レール、P90、ハムで音の特性が全然違うので、結局アンプ側のイコライジングも大きく変更する必要があり、結果的に同じ曲やバンドで切り替えて使うのは現実的ではなさそうなので、まあこれはこれで良いかな。

久しぶりにハムバッカーで弾いてみて、やっぱりハムバッカー音はハムバッカーの音でしかないので、ハムバッカーの曲はハムバッカーでコピーすべきだと痛感しました。ハムバッカーで弾くと音源のハムバッカーの音と大体同じハムバッカーの音が出せるので楽しいです。ハムバッカーいいよハムバッカー。

という感じで、ひとしきり弾いて、「でもまあ、やっぱりシングルコイルの方が好きだなぁ」と思いました。


かかったお金

結果的にかかったお金ですが、

  • SHPR-1n P-Rails Neck Cream:¥12,800(税込)

  • TBPR-1b P-Rails Trembucker Cream:¥12,800(税込)

  • TS-1s Triple Shot Set Flat Cream:¥6,680(税込)

  • 工賃(PU交換のみ):¥3,300(税込)

合計:¥35,580

意外と安く済みました。

※ちなみにリペア自体は電装系の交換と全体調整、フレットのすり合わせもお願いしたので工賃の総額は合計¥25,000くらいでした。

おわりに

ってことで、かつての相棒が蘇ったので良かったです。これからは「自分のことをムスタングと思い込んでいる謎ギター」を卒業して、「やたらと音がいいP-90がマウントされているけど、実戦ではハムしか使ってもらえない形だけムスタングの謎ギター」としての生を全うしてもらいたいと思います。

あと余談ですが、ユースケースを考えれば考えるほど、ストラトシェイプのSSHが最強、という結論にしか辿り着けませんでした。ルックスがスタジオミュージシャン感ありすぎて好みじゃないので使いたくはないのですが、隙のない理想的な仕様だとは思いました。あと20年くらいして見た目とかどうでも良くなったらSSHにしようと思います。